2018.10.3
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経営

企業グループに影響する税制と、それをグループ経営に活かす視点とは

(写真=tsyhun/Shutterstock.com)
(写真=tsyhun/Shutterstock.com)
会社経営の効率化や迅速化を推し進めるため、事業再編やM&Aを通じた、企業のグループ化が顕著になりつつあります。グループ化の傾向は、大企業はもちろんのこと、昨今では中小企業においても増えてきており、現代のビジネスシーンにおける大きな潮流を感じさせます。そこで本稿では企業グループに影響する税制である「グループ法人税制」を中心に、グループ化に関わる税制をどう経営に活かすかについてお伝えします。

「グループ法人税制」とは

グループ法人税制とは、平成22年度税制改正にて創設された税制です。国内に本店や事務所を有しており、また、一部例外を除いて株式所有率が100%の完全支配関係となる、親子会社の取引に適用されます。

グループ法人税制の対象となる一例を以下に挙げてみましょう。

・100%グループ内の法人間の資産の譲渡損益の繰延べ
100%グループ内の内国法人間にて、例えば機械設備の譲渡損益を、そのグループ外へ売却などで移転した時に、その移転を行った法人において計上します。

・100%グループ内の法人間の寄付
100%グループ内の、内国法人間の寄附金について、寄付した法人において全額が損金不算入となり、寄付を受け取った法人において全額益金不算入とします。つまり支出した法人側で税負担することになります。

・100%グループ間の資本取引
100%グループ内の内国法人からの受取配当金について全額益金不算入とする。

「グループ法人税制」が与える影響は?

そもそも、グループ法人税制は、グループ内での取引によって課税される問題を除くための制度です。企業が子会社設立等でグループ会社化するなかで、単一法人だけを重視した課税制度から、100%グループ間での取引を同一法人内のものとみなして、当該年度の課税所得(益金・損金)に反映することはなくなります。親法人に利益が残りそうだからといって、子法人が親法人へ寄付をしても税額は変わらないということです。

グループ法人税制は、法人の規模に関係なく、完全支配関係にある法人間で行われる一定の取引に対し強制適用されます。しかし、企業会計原則上の会計処理ではなく、法人税申告書上の別表にて調整処理をするため、会計上の利益と税務上の利益(課税所得)に大きな差異が発生する可能性があります。また、親会社の資本金が5億円を超える場合、交際費の定額控除や法人税の軽減税率など、中小企業に認められていたいくつかの特例が認められなくなります。この点からも、グループ法人税制は税務面でのメリットというより、必要な場合には注意を払うべきものといえます。

企業グループに影響のある、その他の税制度

企業グループの経営に影響を与える税制度としては、グループ法人税制よりも前に、連結納税制度と、欠損金の繰越控除制度があります。これらは使い方によっては最大限にメリットを引き出せる、非常にインパクトの高い制度といえます。

・連結納税制度

連結納税制度は、企業(連結)グループを1つの法人とみなして、法人税の申告及び納付をする制度です。グループ内に所得(黒字)法人と欠損(赤字)法人がある場合において、その所得と欠損を通算して課税所得を計算でき、課税による資金流出を最低限に留めることができます。大赤字の子会社があるにも関わらず、一方で黒字子会社が多額の納税をせざるを得ないという状態を回避し、事業資金の有効活用ができるメリットがあります。

ただし、適用法人全てが100%グループ法人であること、決算期が同一であること、制度適用の申請が必要なことなどの条件があります。連結納税制度における難点は、制度の適用が法人税(国税)のみであって、地方税には適用されないため、結局、個別法人で申告書の作成と地方税の納税は必須となり、その上で連結納税の申告手続きが加わるため、事務作業が膨大になることです。

・欠損金の繰越控除制度

欠損金の繰越控除制度とは、個別の法人主体にて欠損(赤字)があれば、欠損の額を最長9年(2018年4月1日以後に開始する事業年度では10年)繰越すことができるという制度です。先行年度で赤字でも後の年度で黒字を見込むことが想定される場合は有効です。この制度の注意点は、資本金1億超の法人、また資本金5億以上の法人の100%子会社であれば、繰越控除額の上限が設定されている点になります。

グループ経営に税制を活かす視点とは

企業グループの経営に影響を与える3つの税制度をお伝えしましたが、グループ経営にあたっては、関連の深い税制度の特徴を理解しておくことは肝要です。理解が不十分であった結果、欠損金の繰越控除制度を活用しきれず、グループとして税務メリットを出せなくなることもありますし、状況によってはデメリットのみがクローズアップされることにもなりかねないからです。資本金額を把握した上での利益計画立案や、グループ間取引計画の検討、連結会計制度適用でメリットが享受できるかの確認など、継続的なチェックが望まれます。

企業経営は事業計画を立てて実行し、確認するというプロセスが前提です。一方で税制度もまた企業経営に並走して存在します。従って、個別各社の事業計画を立案する時から、グループ間の取引も考慮した上で、税制度が及ぼす効果をも計画として仕込む、という視点を持つことが大切です。

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